最近大学業界でファンドの話多くない?
銀行員から大学職員になるとお金に強いと周りから思われます。
時には面接、入職後も「元銀行なら知ってるはずだ」といわれることもしばしば。
今回はホットな話題かつ長期的にも話題となること間違い無しの「大学10兆円ファンド」について。
✓大学10兆円ファンドの概要、目的、問題点がわかる
✓銀行員なら知ってるだろうといわれるポイントがわかる
長期的にも必ず話題に挙がるトピックです。この機会にどうぞ
そもそも大学10兆円ファンドって?
・世界トップレベルへ成長できる国内大学を「国際卓越研究大」と認定し、ファンドの運用益で支援。
・10兆円の公的資金を株式などで運用し、その運用益で大学支援を目指す。
・運用益のうち年間3千億円を大学の支援に回し、経済成長の起爆剤となる革新的研究につなげる計画。
10兆円を使い大学を支援するのではなく、あくまで10兆円の運用益だけなのがポイント
流れは以下の感じ
※ほとんどが財政融資≒税金という現実
儲かればの話・・・
支援を受ける大学は「国際卓越研究大学」と呼ばれに5〜7大学が選定されます。
運用益の目標は年3000億円です。
10兆円からしたら3%で3,000億円です。
元金がでかいだけに5%と思えばたいしたことないね。
ちなみに、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の過去20年間の運用実績は約4%です。
5大学が国際卓越研究大学に選ばれるとして、
仮に5校に分配すれば1校当たり600億円です。
2021年度の国立大学運営費交付金でみると、全国2位の京都大(573億円)を上回る規模なので10兆円から見ると少ないが、現実的な交付金でみたら喉から手が出るほど欲しいお金なのです。
ちなみに10兆円のインパクトもかなり大きいです。
マイナス金利と言われ始めてから日銀が年間6兆円程度ETFを購入し相場を支えてきました。
大学10兆円ファンドはETFでなく債券等に幅広く分散投資しますが、10兆円はその日銀バズーカ額を上回る額ですので相場にとってもインパクトは大きいです。
大学10兆円ファンドの目的は?
シンプルになんでこんな長期多額の政策を今更するの?
成長分野での技術革新を強化する狙いです
引用:内閣府
THE世界大学ランキング等で日本の大学の力がどんどん弱まっているという話は有名ですよね。
弱くなった競争力をなんとか食い止め日本の力を取り戻す!
すぐに成果は出ないことですが、これを始めることには意味があると思います。
岸田さんからしても、数十年後に芽が出る話です。
しかし、目先のことばかりでなく長期目線で日本の教育を変えたい想いがあるんでしょうね。
世界ナンバーワンと言われ続けているオクスフォード大学のように上位を目指すと意気込んだものです。
いまの日本の大学がトップオブトップの大学を目指して果たして上手くいくのだろうか?
大学10兆円ファンドの問題点は?
個人的に今回の10兆円ファンド最大の問題点は、ファンドの原資が財政融資資金に頼っていることです。
・税負担に拠ることなく、国債の一種である財投債の発行などにより調達した資金を原資としている
・政策的に必要だが、民間では対応が困難なプロジェクト(長期・多額)の実施を可能とするための投融資活動です。
海外では寄付金を原資とした大学ファンドが多いです。
一方で、今回の大学10兆円ファンドは財政投融資(40年償還)が主な原資であり、かつ20年後には元本返済が始まってしまうのです。
また問題の先送りか。結局若者が将来負担するのか
今回の話は経済的な国の支援によるいわば超長期目線の話です。
悲観的に見ようとすればいくらでも見れますが、今回は日本の将来の大学力を大きく変えるかもしれない国家プロジェクトです。
将来のことなんてわからないんだし、こればかりは仕方ないのかなぁ
繰り返しですが、結局10兆円の財源は借金ですね。
このことからわかるように、大学ファンドは借りたお金に利子を付けて返済する必要があるということです。
しかし、これまでも貸したお金が国に返ってこない例はたくさんあります。
そして大学10兆円ファンドは金額や期間も異例なだけあってリスクも高い。
当然銀行が一般融資をしないレベルの水準から資金投入を行うため、スタートアップ投資に近いです。
普通は高速道路等インフラ整備等で資金投入が行われ、道路利用料金等の分かり切った回収計画があり資金投入を行います。
そういう意味では今回は博打に近いという意見も多い。
私は今回の10兆円ファンドも、借金だけど結局国庫に帰属しない資金になる可能性が高いと感じますね。
最終的に一般会計で補てんすることが目に見えてるような・・・・って感じ。
そもそも目指しているアメリカの有名大学は、今日本がしようとしているように国家主導の資金投下で成長してきた訳ではありません。
大学改革の次の次元で、大学が自ら存在意義を問い続け邁進してきた結果今の地位があると考えます。
そのため税金に頼った責任の所在があいまいな本取り組み長い目で見るとなぁなぁで終わる気がしますね・・・
・10兆円ではなく運用益だけを国際卓越研究大学に支援。
・技術革新を強化し日本の大学を世界水準へしたい
・問題点や懸念点は将来へ先送りされている
つぎに銀行なら知っておくべき関連ニュース
東大もファンドを設立!慶応に追随!
実は東大も既にファンドを設立することを掲げています。
期間は約10年、金額は600億規模(原資は東大が100億円(出資)、他は外部資金だそう)
将来的に700社の東大発ベンチャーを創設することを掲げています。
このように大学では10兆円ファンドを意識してか、今までにない形で挑戦し、最終的に世界大学ランキング上位を目指しより補助金を得ようとどこも必死です。
特にこの手の話で話題になるのが慶応大学。
慶応は私立ですが、いち早く「慶応イノベーション・イニシアティブ」といった大学VCも設立しています(2015年に)
主に大学の研究成果の社会実装を目指すスタートアップに対して投資や支援を行う投資会社のこと。
慶応は野村HDと組んで昔から力を入れている。
慶応は過去からスタートアップ創出に力を入れてきています。
慶応大学は2026年までに大学発ベンチャーを300社創設することを掲げています。
参考までに。
東工大と医科歯科大の統合の背景にある「大学10兆円ファンド」
2022年後半、大学業界の話題をかっさらったのはこのニュースです。
2024年度の統合を目指す「東京工業大」と「東京医科歯科大」
両校は将来の統合を前提に「国際卓越研究大学」の認定を目指すとハッキリ言っています。
つまり補助金のための合併。そんなことが起こるくらい大学業界はただでさえ減らされている補助金が欲しいんです。
本来大学の合併のイメージは元気な大学が、苦しい大学を吸収するイメージがありました。
しかし今回の件をきっかけに、別の視点での大学合併が起こるかもしれません。
個人的にはかなり前向きな合併で、今後もこういった形で大学数を減らすことには賛成。
大学職員を目指すうえでは、こういった背景もしっかりとらえながら業界研究が必須ですね。
特に国際卓越研究大学に選ばれることを目標としている大学では、面接時にも注意してください。
これを知っているか知っていないかで転職の本気度が試されます。
支援期間25年という異例の長期支援
文科省による個別大学への支援期間は5〜10年が一般的です。
・スーパーグローバル大学(大学の国際化支援)
14〜23年度の10年。
・私立大学研究ブランディング(独自研究に取り組む私立大を支援)
最長5年。※同事業に絡む汚職事件を受け打ち切られています。
・【今回】大学10兆円ファンド(国際競争力の強化と技術革新を支援)
最長25年という異例の長さ。
要は、岸田さんが始めた政策ってことになっていますが、25年後今の高齢者議員は一掃されているでしょう。
つまり誰も責任を取らないまま進んでいくことになります。
最終一般会計で補てんし結論将来の若者につけが回ることでしょう。
国際卓越研究大学に選ばれ資金を手に入れる大学とは?
5〜7大学が国際卓越研究大学に選ばれるとの報道がある中、候補はやはり旧帝大。
東工大のようにファンド資金を目論んだ大学合併も起こっています。
にもかかわらず、全国800近い大学がある中、40大学程度が申請すると言われています。
これは何を意味するのか、
ただでさえ人口減少かつ大学乱立、補助金減額が大学にとって苦しい中、この大学10兆円ファンドによる助成は額が大きく上位台にとっては何といっても欲しいんです。
また国際卓越研究大学に選ばれなかったとしても、こういった政府の新取り組みに対して申請するだけでも意欲のある大学といった印象をつけることとなります。
このファンドを用いた取組を行い、国際競争力の強化と技術革新を支援することは結果的に世界大学ランキングで上位となる必須項目。
ここからも、国際卓越研究大学に選ばれないことがほぼ確実な大学であっても申請し、大学を変えていこうといった意気込みが感じられますね。
また現場の意見としては、金額が大きすぎるがために敬遠してしまう大学も多いそう。
当然国際卓越研究大学という国家プロジェクトに約800校の中から選ばれた5〜7校はプレッシャーが半端ないでしょう。
ただでさえ大学改革に没頭している大学職員がこんな国家国家プロジェクトを請け負うとなれば、業務量も増えることながら今後の大学の指針を大きく変えることにもなりかねません。
そういった意味では現時点から金融機関の優秀な人材を大学内に囲い込む動きも多いようですね。
大学職員を目指す上では、こういった採用枠がもしあれば挑戦してみるのも面白いかもしれません。
おわりに・・・ぼくの意見
大学10兆円ファンドについて最低限大学職員を目指す方向けに、主観マックスで解説してきました。
いろいろ不安な点はあるものの、新たな取組をすることに対しては大変前向きで良いことだと思います(面接でもこう話しました。)
長期かつ額も莫大でありインパクトがあることから、大学職員を目指すうえで知っておいて損はないトピックにしばらくなるでしょう。
元銀行員であれば、面接で聞かれたり入職後にも知っていて当然って感じになりかねないため簡単に一言「私はこう思う」ってことだけ頭の片隅にいれておいてもいいかもしれませんね。
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